C型肝炎を正しく理解するために
肝臓癌撲滅を目指して -第2版-
Q 1 C型肝炎の患者様はどのくらいいらっしゃるのでしょうか?
Q 2 C型肝炎はどのようにして診断されるのでしょうか?
Q 3 C型肝炎ウイルスには2種類あると聞いたのですがどのように違うのですか?
Q 4 C型肝炎は治療しないとどうなるのですか?
Q 5 C型肝炎と肝臓癌との関係について教えてください。
Q 6 肝臓癌はどうやって診断するのですか?
Q 7 C型肝炎のインターフェロン治療について教えてください。
Q 8 インターフェロン治療の成績について教えてください。
Q 9 インターフェロン治療の副作用について教えてください。
Q10 インターフェロン治療はいくらかかりますか?
Q 1 C型肝炎の患者様はどのくらいいらっしゃるのでしょうか? 戻る |
C型肝炎持続感染者は200万人以上存在すると推定されています。米国では400万人以上と推定されています。日米のC型肝炎患者の年齢分布は図1のように異なっています。日本では年齢とともに増加しますが、米国では40歳代にピークがあります。これは日本では太平洋戦争(1941年から1945年まで)、米国ではベトナム戦争(1965年から1973年まで)の戦後の混乱期に感染が顕著になったためと考えられています。また、日本では1990年以前に手術、事故、出産などで輸血をお受けになった方が約30-40%を占めています。 |
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Q 2 C型肝炎はどのようにして診断されるのでしょうか? 戻る |
多くの場合、健康診断や献血の際の肝機能検査AST (GOT) やALT (GPT) の上昇が指摘され、医療機関を受診しC型肝炎ウイルス抗体が陽性であった場合、C型肝炎が疑われます。さらに、C型肝炎ウイルス精密検査(ウイルス量の測定やウイルスの分類)でウイルスの存在が証明されれば慢性C型肝炎感染と診断されます。ウイルスの存在が証明できなければ過去に感染し、今はC型肝炎ウイルスがいないことを意味します。インターフェロン治療がうまくいった場合や大変まれですが知らない間にウイルスが排除された場合がこれにあたります。体調の不良を自覚して医療機関を受診してC型肝炎ウイルス感染による肝臓病を指摘されることもありますがこのような場合はすでに肝臓病が進行して肝硬変や肝臓癌を併発していることが多く治療も大変です。肝臓病にもいろいろありますので肝臓が悪いと云われたら体調は良好でもなるべく早く医療機関を受診し先生と相談されることをお勧めいたします。 |
Q 3 C型肝炎ウイルスには2種類あると聞いたのですがどのように違うのですか? 戻る |
C型肝炎ウイルスは遺伝子検査でセロタイプ1型(ジェノタイプの1a、1bに相当)とセロタイプ2型(ジェノタイプの2a、2bに相当)の二種類に分類されます。日本では1型が70%で2型が残りの30%です。インターフェロンは1型より2型の方が効きやすいことが知られています |
Q 4 C型肝炎は治療しないとどうなるのですか? 戻る |
C型肝炎ウイルスがやっかいなのは約70%の患者様では感染してから平均約30年で肝硬変になってしまうのです。図2の様に、中年以降の男性でお酒をよく飲むC型肝炎の患者様では年に0.33で繊維化が進むと言われています。4になると肝硬変ですから0.33に13を掛けると約4になりますので13年で肝硬変になると考えられます。
図 2 C型慢性肝炎患者様の繊維化の進展 また、C型肝炎ウイルスの感染の年代によっても肝硬変へのスピードが異なることが明らかになっています。図 3のように特に50歳以上で感染すると60代後半で肝硬変に移行するといわれています。一方、20-30歳代に感染を受けた方が60代後半で肝硬変に移行する確率は50%にも満たないのです。
図 3 C型慢性肝炎患者様の繊維化の進展:発症年齢との関係
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Q 5 C型肝炎と肝臓癌との関係について教えてください。 戻る |
肝臓がんで命を落とす方の70-%はC型肝炎の患者様です。しかしながら、C型肝炎の患者様の中でも肝臓がんになりやすい方とそうでない方がいらっしゃいます。肝生検を行いますと肝炎の程度が分かります。実際にはF1からF4までに分類されます。F1は軽い肝炎、F2はある程度進行した肝炎、F3は肝硬変の手前の肝炎、F4は肝硬変です。年間の発ガン率ではF4が7-8%、F3が3-4%、F2が1-2%、F1が0.5-1%です。ですから、もし、私が100人の肝硬変の患者様を10年間診察していたらそのうち70-80名の方に肝臓がんが出現することになります。一方、F1の軽い肝炎の患者様100人を10年間診察していてもそのうちわずか5-10名の方しか肝臓がんが出現しないと考えられます。 |
Q 6 肝臓癌はどうやって診断するのですか? 糖尿病の治療 戻る |
肝臓がんの診断には画像診断が有力です。画像診断とは読んで字のように画でみる検査です。この検査には腹部超音波検査と腹部CT検査があります。CT検査においては肝臓がん発見のためにはある程度の機械が要求されます。当院の機械はもちろん肝臓がんの診断に耐えるだけの能力を持った機械ですのでご安心ください。また、先ほど述べたように肝臓の病状が重いほど肝臓がんの危険は大きいのです。ですから、当院では肝硬変(F4)もしくは肝硬変の手前(F3)の患者様には年に2度のCT検査をお勧めしています。腹部超音波検査は三ヶ月に一度お勧めしています。ただし、一旦肝臓がんが発見された患者様は年に25%の確率で新たな肝臓がんが出現することが知られておりますので年に3-4回程度のCT検査と1-2ヶ月に一度の腹部超音波検査が必要でしょう。 |
Q 7 C型肝炎のインターフェロン治療について教えてください。糖尿病の食事療法 戻る |
C型肝炎の治療で一番いいのはウイルスがいなくなることです。次に、いいことはウイルスがたとえ消えなくても肝炎が静まることです。図4は虎ノ門病院からの報告ですが、C型肝炎の患者様をインターフェロンで治療を行い、ウイルスが消えるかあるいは肝炎が沈静化しますと無治療の患者様やインターフェロンが効かなかった患者様と比べて発がん率が大幅に減少することが知られています。ですから、インターフェロン療法はまさに「肝臓癌の治療」そのものなのです。 図 4 インターフェロン治療と肝臓がん
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Q 8 インターフェロン治療の成績について教えてください。 戻る |
まず、Q3で述べましたように、セロタイプ2型の患者様では70-80%の確率でC型肝炎ウイルスを駆除することができます。セロタイプ1型でもウイルス量が100kIU/mL以下の患者様では70-80%の確率でC型肝炎ウイルスを駆除することができます。問題なのは、セロタイプ1型でウイルス量が100kIU/mL以上の患者様です。図5の様に、これらの方に半年間(2週間の入院と22週間の通院治療)インターフェロンのみで治療した場合とリバビリン(飲み薬)とインターフェロンの併用療法を比較した場合のC型肝炎ウイルス駆逐率は前者が約3%で後者が約20%です。したがって、これらの患者様には基本的にリバビリンとインターフェロンの併用療法が選択されます。さらに、この治療を一年間続けるとウイルス駆逐率は約30%になります。図6には従来のインターフェロンとリバビリンの併用療法と副作用が少なく長時間作用型のPEGインターフェロンとリバビリンの併用療法の48週投与の治療成績ですが後者の場合のウイルス駆逐率は約40%になります。残念ですが、現時点ではPEGインターフェロンとリバビリンの併用は保険で認められていません。ですから、私たちはセロタイプ1型でウイルス量が100kIU/mL以上の患者様にはリバビリンとインターフェロンの併用療法を24週間行い、その後の24週間をPEGインターフェロンで治療する方法を推奨しています。PEGインターフェロンの利点は通院回数も週1回ですみ(通常は週3回)、副作用も少ないことがあげられます。最後に、インターフェロン治療を開始し12週以内にウイルスが消失しなければウイルスの駆逐は望めないことが知られていますのでこの場合はインターフェロン治療を中止しています。 図5 インターフェロン(IFN)単独療法とリバビリン(RBV)併用療法の比較: McHutchison et al. N Engl J Med 1998;339:1485-92 図6 インターフェロン(IFN)とリバビリン(RBV)併用療法とPEGインターフェロン 治療後24週ウイルス消失率 |
Q 9 インターフェロン治療の副作用について教えてください。 戻る |
一週間以内の副作用として、インフルエンザ様の発熱、体のだるさ、頭痛、関節痛、筋肉痛があります。当院ではインターフェロンを投与する前に座薬を用いますのでこれらの副作用は心配いりません。2-8週目には、食欲不振、吐き気、味覚症状、不眠・不安、イライラ、発疹、倦怠感が出ることがあります。お薬や点滴で治療します。2ヶ月以降には、間質性肺炎や眼底出血に気を付けます。リバビリン併用療法では8-12週目に貧血が出現します。ですから、もともと貧血がある方には投与できません。また、奇形の問題があり出産など予定している場合は時期を検討する必要があります。PEGインターフェロンは一般的に副作用が少ないと言われています。 |
Q 10 インターフェロン治療はいくらかかりますか? 戻る |
高額医療となりますので公費負担が受けられます。自己負担分は治療内容や収入によって違います。お気軽にお申し出ください。 |